大手電力会社10社のことし3月分の電気料金は比較できる過去5年間で最も高い水準となります。
最近、毎月の電気料金の請求見ていて、あれ?こんなに電気使ったかなと思ってしまいます。高いですよね。
このところ、すごい勢いで電気料金が上がっています。
例えば、利用者が多い東京電力で見ると、使用量が平均的な家庭での電気料金は、去年の3月が6408円。
しかし、今年の3月は8244円。
1年間で実に1836円上がっていることになります。
さらに、関西電力と中国電力、北陸電力では電気料金が値上がりしすぎて、一部の契約では制度上、値上げできる「基準価格より5割高い」という上限を突破してしまい、会社が超過分を負担する事態になってしまいました。
端的にいえばエネルギー価格の高騰の影響を受けているからということになります。
正確にいうと、原油価格と天然ガスの価格がどちらも高騰しているからであり、エネルギー価格と電気料金をむすびつける仕組みとして
「燃料費調整制度」
が深く関わっているからです。
日本は火力発電への依存度が高い国です。
この火力発電に使う燃料価格は常に変動しています。
価格が急激に上がってそれがすぐ電気料金に反映してしまうと利用者にも電力会社の経営にもダメージを与えてしまいます。
そこで、燃料価格の変化をならして電気料金にも反映させようと導入されたのが「燃料費調整制度」です。
過去3か月間の天然ガスや石炭、石油の価格の平均を算定して、2か月後の電気料金に反映させる仕組みになっています。
ちなみに、日本では発電量に占める火力発電の割合が2020年度実績で76%余り。
全体のうち、石油などが6.3%、天然ガスが39%、石炭が31%となっています。
天然ガスによる発電が多いのです。
日本の電力会社は天然ガスを液化したLNG=液化天然ガスで輸入しています。
半球型のタンクを積んだLNG船をニュースで見た人もいるかと思います。
電力会社が輸入するLNGのうち、8割程度が10年間など長期の契約です。
長期で契約しているなら価格は安定しそうなものですが、このLNGの長期契約は3か月分の原油価格をベースに変動する仕組みです。
原油価格が上昇すればその分、長期で契約しているLNGの価格も上がることになります。
それが電気料金の値上がりにつながるわけです。
そして現在、原油価格はかなり高騰しています。
去年の春、新型コロナウイルスの影響により、世界各地で経済活動が実質的に止まり原油価格も大幅に下落しました。その後、経済活動の再開に伴い、価格の上昇が続いています。
さらに、最近は中東で石油施設の爆発や火災などが相次いだことやウクライナを巡るロシアと欧米との緊張状態が続いていることから供給への懸念が強まっています。
ニューヨーク原油市場では、1月19日に原油価格の国際的な指標となるWTIの先物価格が、一時、1バレル=87ドル台後半まで上昇し、およそ7年3か月ぶりの高値をつけていて、今後の価格上昇にも警戒が必要です。
LNGのうち、残りの2割分の価格は長期契約ではなく、すぐに取引する、「スポット価格」と呼ばれるものになります。
これは天然ガスそのものの需給で大きく動きます。
日本の電力会社が輸入する際の価格となるアジア市場のスポット価格は去年10月初旬には前の年の同じ時期と比べて10倍を超える価格まで高騰していて、今も高い水準で推移しています。
原因はさまざまですが、①中国の「青空作戦」、②ロシアと欧米の政治対立この2つが影響を与えていると言われています。
中国の青空作戦ですが、中国は環境シフトを急速に進めています。
石炭火力から二酸化炭素の排出が比較的少ない天然ガス火力へと、移行を加速していて、LNGの輸入量も増やしています。
冬のオリンピックが北京で開催されたこともあり「青空」を見せたいという中国政府の思いがことさら強かったようです。
そしてロシアとウクライナをめぐる問題です。
最近の高騰はこの影響が大きいです。
ロシアがウクライナ国境周辺に軍の部隊を展開して欧米との軍事的な緊張が続いています。
また、ロシアが、ヨーロッパ側に圧力をかけるために、既存のパイプラインでのガス供給量を絞り込んでいるのではという思惑が広がり、ヨーロッパの天然ガスのスポット価格が急騰しました。
この影響が伝ぱし、アジアの市場でも価格が急上昇しています。
つまり、8割の方の天然ガスも2割の方の天然ガスも、どちらも上がってい状況が続いているわけです。
さらに電源構成のうち3割を占める石炭の価格も上昇傾向です。
世界最大の石炭の輸出国、インドネシアが国内の火力発電所向けの供給が不足しているとして一時的に輸出を禁止したことは記憶に新しいですよね。
エネルギー価格の高騰は、日本だけではなく世界につながっている話です。
産油国の状況だけでなく、新型コロナの経済活動への影響、それにアメリカの金融政策の行方といった、さまざまな要因が複雑にからんでいて、簡単な解決策はありません。
家計や産業への負担がずしりと重く感じる冬になりそうです。